長くなりますので、お暇なとき、気が向いたら読んでみてください。

2019年4月23日
私達夫婦は、娘を授かりました。
出生時2978gで、とても元気な女の子でした。

生まれてしばらくはすくすく育ち、夫婦で我が子の成長を楽しみに見守っていました。
しかし、生後一週間を過ぎたあたりから、娘の体調に異変があらわれました。
呼吸が荒くなり、母乳をあまり飲めなくなり、一日中ぐずぐずと泣いている……。何かがおかしいと思い、小児科の医師に診てもらったところ、その医師はすぐに顔色を変えて、「娘さんには重篤な心疾患があり、すぐさま手術を受けないと命に関わる」と宣告しました。
心臓の機能が上手く働かず、全身に充分な血液を送ることができずに、次第に衰弱してやがて死に至る、という先天性の疾患でした。
先天性の疾患ながら、生まれた直後はまだしっかり心臓が動いていたので発見が遅れてしまい、ほとんど手遅れになる寸前になっていました。
まさに、青天の霹靂でした。
ゼエゼエと、荒い呼吸をしながら眠っている娘を抱いて、子供のように泣きじゃくっている妻を見て、私は呆然としつつ、「神様は、なんて酷いことをするのだろう……」と思っていました。
新生児の心臓を扱う非常に難しい手術で、北海道では唯一北海道大学病院だけがその手術をおこなうことができると言われ、私達は救急車ですぐに北大病院へ向かい、娘はそのまま入院することになりました。
緊急を要するものの、数少ない執刀医のスケジュールの都合もあり、手術は二日後に決まりました。
病院で、私は、祈りました。
三十もとうに過ぎた男が、生まれてはじめて、本気で、本気で神に祈りました。
「神様、どうか娘の命を助けてください。お願いします」
「もし娘の命を助けてくれるのなら、私は今よりも少しだけマシな人間になることを誓います。だから、娘を助けて下さい」
私の神への願いが通じたのかどうかは、わかりません。
ですが、9時間に及ぶ大手術の末、娘の命は助かりました。
とても衰弱して痩せ細り、出生時よりも体重が減ってしまっていましたが、それでも、娘は私達夫婦のもとへと帰って来てくれました。
私達夫婦は、娘の命を救ってくれた北大病院のドクターと、ナースの皆さんに心の底から感謝しました。

手術から三週間後、娘は無事に病院を退院することができ、その後も経過は良好。入院時、親から引き離されたせいで、しばらくは情緒不安定となっていましたが、両親(とくに母親)の献身的な看病と愛情を受けて、それも次第に解消され、現在では何の心配もなく、ふたたびすくすくと成長をしています。

すっかり元気になった娘をみて、ふたたび幸せな生活を取り戻した私は、あの時の誓いを思い出しました。
「娘の命を救ってくれたら、今よりもう少しマシな人間になる」
私は、神との誓いを果たすため――いえ、じつはそれほど大仰なものではなく、ただ、娘が誇りに思える、大好きな父親になるため、これまでの自分を少しだけ変えてみよう、と思い立ちました。
自分は子どもが好きだから、子どもたちの未来のために、自分ができることを、少しずつでもやっていこう――そう、決めました。
具体的には、手始めにまず「KFCプログラム」とは別にこれまで続けて来た、道内外の児童養護施設へのメロンの寄贈を、これまで以上のスケールでおこなっていこうと思っています。
そして、それだけに留まらず、これからは「農家」という枠にこだわらずに、志を同じくする方々と協働し、子供たちの未来のために、できることは何でも挑戦していくつもりです。
活動の内容については、随時ホームページなどで発信していく予定です。活動に興味がある方、当園と協働してくれる方、独創的なアイデアをお持ちの方、どなたでも構いませんので、お気軽にお声かけください。
今後とも自然菜園らっちゃこをよろしくお願いいたします。
自然菜園らっちゃこ 園主 榎本和樹